カンキツ黒点病|カンキツそうか病|カンキツかいよう病|カンキツ灰色かび病
カンキツ緑かび病・青かび病|ナシ黒星病|ナシ輪紋病|ナシ赤星病|ナシうどんこ病
ナシ胴枯病|ナシ萎縮病|モモせん孔細菌病|モモ縮葉病|モモ灰星病
モモホモプシス腐敗病|モモ黒星病|モモ炭疽病|ブドウべと病|ブドウ黒とう病
ブドウ晩腐病|ブドウ褐斑病|ブドウうどんこ病|カキ角斑落葉病|カキ円星落葉病
カキ炭疽病|カキうどんこ病|カキ灰色かび病|イチジク疫病|イチジク株枯病
イチジクさび病
カンキツ黒点病
葉の症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、カンキツ類のみを侵す。)
- 多発時期
- 梅雨期と秋雨期
- 病 徴
- 葉、果実、枝に小黒点を生じる。枝が激しく発病すると赤変してその先が枯死する。貯蔵中に発症すると軸腐病となる。
- 伝 染
- 枯枝に形成された柄子殻(柄胞子)または子のう殻(子のう胞子)が伝染源となり、水媒伝染する。
- 防 除
-
- 枯枝を作らないような栽培管理(老木の更新、密植園の間伐等)。
- 枯枝の除去(剪定枝の園外への搬出)。
- 薬剤防除は、梅雨期の6月上旬(第1次生理落果期)、6月下旬(第2次生理落果期)および8月中下旬(秋雨期前)の3回を基本とし、登録のある農薬を散布する。伝染源の菌密度が高いとき、両雨期に雨が多く薬剤の付着量が少なくなった場合には、散布回数を増す。
カンキツそうか病
葉の症状
果実の症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、カンキツ類のみを侵す。)
- 多発時期
- 梅雨期
- 病 徴
- 葉、果実、枝に病斑を生じる。まず発芽したばかりの若芽に発生する。はじめ小さい水浸状の斑点であるが、やがてこれがとび出した病斑(いぼ型)になったり、それほどとび出さないで、ガサガサしたかさぶた状の病斑(そうか型)となる。病斑表面は灰褐色〜淡褐色。果実にも葉と同様の病斑ができる。枝の病斑はそうか型のみ。
- 伝 染
- 越冬罹病葉が伝染源となって、水媒により新葉に伝染する。その後伸長する新葉や果実に次々と感染をくり返す。
- 防 除
-
- 多発園では発芽初期、落花直後、幼果期の3回、中発生園では発芽初期、落花直後の2回、少発生園では落花直後の1回、登録のある農薬を散布する。
- 被害夏秋梢の剪除。
- 密植園では整枝・剪定により通風を図る。
- 窒素過多にならないように肥培管理する。
カンキツかいよう病
レモン果実の症状
- 病 原
- 細菌(カンキツ類のみを侵す)
- 多発時期
- 5〜10月
- 病 徴
- 葉では、はじめ葉裏に濃緑水浸状円形の病斑ができ、病斑は拡大に伴って中央部から徐々に褐色コルク化し、葉が成熟するころには直径2〜5mm程度となり、病斑の周縁は幅1〜2mmが黄色化する。春葉展開始期から激しく発病すると落葉する。果実では、はじめはやや盛り上がった濃緑色水浸状円形病斑ができ、拡大に伴い頂部はザクロ状に亀裂を生じる。枝も軟弱な時期には感染、発病する。
- 伝 染
- 前年の枝や葉の越冬病斑が伝染源となり、3月ごろから増殖した細菌が降雨時に飛散して気孔や傷口から侵入する。
- 防 除
-
- 剪定時期に夏秋梢や越冬病斑の多い枝は剪除する。
- 多発園では、越冬葉への春先感染防止対策として、発芽前の3月中下旬に無機銅剤を散布する。
- 生育期では、開花前、落花直後と梅雨時に登録のある農薬を散布する。雨前の予防散布が重要である。
- ミカンハモグリガを防除する。
- 防風垣を設置する。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
カンキツ灰色かび病
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびで、各種の作物を侵す。)
- 多発時期
- 5〜6月、貯蔵中
- 病 徴
- 開花期:花弁が付着した部分から、若葉に淡褐色の1〜3cmの円い病斑ができ、のちに落葉する。腐敗した花弁が幼果にいつまでも付着していると、傷害果となる。多発すると落果する。貯蔵期:果皮の一部に汚褐色で丸い病斑を作り、間もなく病斑全体が灰色のかびで覆われるようになる。接している果実に次々と伝染する。
- 伝 染
- 空気伝染で花弁に感染、接触した幼果、若葉に伝染。貯蔵果には空気伝染。
- 防 除
-
- 密植園の間伐等により通風をよくする。
- 園地の排水を良好にする。
- 着花過多を避ける。
- 満開期に登録のある農薬を散布する。
カンキツ緑かび病・青かび病
貯蔵果での緑かび病の発病
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびで、カンキツ類のみを侵す。)
- 多発時期
- 緑かび病;収穫直後の10〜12月と貯蔵末期の3月。
青かび病;1〜3月。 - 病 徴
- 果実が水浸状に腐り、緑かび病でははじめ白色、のちに中心部から青緑色粉状、青かび病では青色粉状のかびを生じる。周辺白色部分は緑かび病のほうが幅広い。
- 伝 染
- 土壌中で越冬した病原菌が秋ごろから胞子を飛散、収穫果に付着して貯蔵庫内に持ち込まれ、果皮の傷口から侵入、発病する。発病果から胞子が飛散して、二次伝染する。貯蔵終期では傷がなくても感染、発病する。早生温州では立木の果実にも緑かび病が発生する。
- 防 除
-
- 収穫1〜2週間前に、登録のある農薬を散布する。
- 果皮を傷つけないようにする。
- 収穫後果皮をなるべく急速に乾燥させる。
- 貯蔵庫内の環境を適切に保つ(温度4〜5℃、湿度80〜85%が最適)。
- 貯蔵庫を点検し、腐敗果を早めに取り除く。
ナシ黒星病
葉柄の症状
幼果の症状
成熟果の症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、日本ナシのほか中国ナシ、西洋ナシを侵す。)
- 多発時期
- 4月下旬〜8月
- 病 徴
- 春から夏にかけては、主に葉裏の中肋や小さい葉脈に沿って黒いすすが盛り上がったような病斑(春型病斑)ができる。葉脈以外の葉身部や葉柄、果梗、幼果、枝にも病斑ができ、果実は裂果することが多い。夏から秋には、葉裏にうっすらとすすをつけた病斑を点々と生じ、ときには全面に広がった病斑(秋型病斑)が発生する。
- 伝 染
- 病原菌は罹病落葉及び長果枝上の腋花芽で越冬し、春に落葉上に形成される子のう胞子及びりん片病斑上に形成される分生子が、満開6日前〜30日後(盛期は20日後ごろ)の降雨翌日に飛散し、新葉や幼果に感染する。第二次伝染は、葉や果実の病斑上に形成された分生子により起こる。
- 防 除
-
- 落葉を集めて焼却または土中に埋める。
- りん片発病芽を開花始めまでに切除する。
- 薬剤散布は開花直前から始め、登録のあるDMI(EBI)剤などを散布する。
- 開花前から発病が見られる場合は、開花期にハチに影響のない薬剤を散布する。
- 満開7日後から10日程度の間隔で定期的に薬剤を散布する(DMIと予防剤のローテーション)。
- 満開7日後の散布は、赤星病との同時防除のため、DMI剤を用いる。
- 幸水等で胴枯病菌による心腐れ症の発生が懸念される場合は、満開期から5月中は同時防除を考慮。
- 5月下旬〜6月中旬は、輪紋病も考慮。
- 6月下旬は果実への感染防止のため、登録薬剤の中から、特に高い効果の期待できる薬剤を選択して散布する。
- 落葉1か月前から、保護殺菌剤(有機銅を含む剤など)を2〜3回散布して、鱗片への感染を防止する。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
ナシ輪紋病
4年生枝のいぼ
果実の病斑
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、日本ナシのほか西洋ナシ、リンゴを侵す。)
- 多発時期
- 8月中旬〜9月中旬
- 病 徴
- 果実では、熟期の1か月くらい前から、果点を中心に、そのまわりに径1〜2mmの、黒褐色で少しへこんだ病斑を生じる。 果実の熟度が進み果皮が黄変するころになると、病斑は急速に拡大し、果肉が球状に軟化する。病名どおりの典型的な輪紋は現れないことが多い。枝には丸い“いぼ”を生ずる。いぼは、新梢上に形成された場合には直径1mm程度の大きさであるが、2年枝以上の枝では、径2〜3mmないし数mmで、高さも数mmのものが多い。
- 伝 染
- 枝幹上のいぼ内およびその周囲の枯死病斑が伝染源となり、降雨時に分生子を放出し、果実や新梢に感染する。
- 防 除
-
- いぼの発生している枝の剪除またはいぼの削り取り。
- 5月下旬〜7月上旬に登録のある農薬を10日程度の間隔で散布する。
- 袋かけ栽培すると果実の被害は少ない。6月中旬以降の袋かけでは手遅れ。
ナシ赤星病
葉表の病斑
さび胞子堆
- 病 原
- 糸状菌(担子菌類に属するかびで、日本ナシのほかには西洋ナシ、ボケ、カリン、マルメロなどを侵す。)
- 多発時期
- 4〜5月
- 病 徴
- 展葉を終わったばかりの葉に明るい黄色の小斑点を生ずる。病斑は次第に拡大し、直径が数mmに達し、色が濃くなり、黒褐色の小点を多数生じ、ややへこむ。病斑からは蜜を分泌するので、やや光って見える。これをなめに昆虫が集まり、これによって精子が運ばれ、接合がおこる。6、7月ごろになると、病斑の裏面に毛状のさび胞子堆(銹子腔)が現われる。その先端はのちにササラのように割れ、粉(さび胞子)が飛び出す。7月以降になると、病斑部は腐り、黒褐色の大きな病斑となる。病斑の多い葉は落葉する。果梗や幼果も発病する。
- 伝 染
- 2〜3月ごろにビャクシン葉に潜伏していた病原菌が冬胞子堆を形成し、4月上旬〜下旬の降雨時に担子胞子(小生子)を飛散させ、ナシの若葉等に感染する。病斑部にはさび胞子堆(銹子腔)が形成され、6〜7月になると、ここからさび胞子が飛散し、ビャクシンの葉に感染、潜伏する
- 防 除
-
- 黒星病主体の防除で対応可能である。
- 予防剤(有機硫黄剤など)を使用する場合は、ビャクシン上の冬胞子堆の膨潤を確認したら、降雨前に散布する。
- 治療剤(DMI(EBI)剤など)を使用する場合は、感染後の散布でも効果が高い。
- 園地の周辺にビャクシン類を栽植しない。
- 周辺のビャクシンを伐採できず、本病の発生が多い場合は、冬胞子堆の膨潤前に石灰硫黄合剤などをビャクシンに散布する。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
ナシうどんこ病
葉裏の病斑
未熟な子のう殻
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、日本ナシのほかには西洋ナシを侵す。)
- 多発時期
- 7〜10月(特に8月以降)
- 病 徴
- 葉の裏に白い粉をふりかけたような円形の病斑ができる。ひどく発病すると病斑は葉の裏面全部に拡がり早期落葉する。秋になると白い病斑の中に黄白色の細粒状の子のう殻(径224〜273μm)ができる。この粒は次第に色が濃くなり、最後に黒くなる。
- 伝 染
- 被害落葉から離脱し、枝幹に付着した子のう殻と落葉に残った子のう殻が第一次伝染源となり、春〜夏に子のう胞子を飛散させ、風媒伝染する。夏〜秋は、病斑上に形成された分生子で二次伝染する。
- 防 除
-
- 落葉を集めて土中深く埋めるか焼却する。
- 多発すると防除が困難となるので、発病初期から登録農薬を散布して防除を行う。
ナシ胴枯病
枝の病斑
心腐症状
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびで、宿主範囲等については十分解明されていないが、西洋ナシの尻腐病菌と同一である。)
- 多発時期
- 5〜9月
- 病 徴
- 1、2年生の枝では、はじめ水浸状、暗褐色の病斑が広がり、次いで乾枯し、赤褐色の病斑になる。病斑と健全部との境には、亀裂を生じ、境界がはっきりする。病斑面に、等高線のような放物線型の輪紋を生ずるのも特徴である。のちには、病斑の表面にも亀裂が入り、そこに黒い小さな粒(柄子殻)を多数生ずる。太枝や幹の症状も同様であるが、切り口からややへこんだ病斑が楕円形または縦長に広がる。病斑は浅く、形成層にまで達しないことが多いが、病斑が広がり、枝を取り巻いたり、枝の分岐点まで達すると、その先が枯死する。よく似た病徴を示す病気に枝枯病があるが、正確な診断には、繁殖器官の顕微鏡観察が必要である。果実では、収穫期または収穫後に果心部から軟化腐敗する。
- 伝 染
- 病斑上に形成された柄子殻から溢出した分生子が、主に雨水とともに飛散し、剪定による切り口や日焼け、凍害を受けた部分、昆虫の食害痕等の傷口から侵入感染する。果実には満開期から満開45日後に、蕚筒部から侵入する。
- 防 除
-
- 樹勢低下を引き起こさないような栽培管理をする。
- 病斑を早期発見して削り取る(早ければ5月から病斑が見え始め、初夏から秋に急激に拡大する。木質部まで達する病斑は、削り取っても再生しやすいので、健全部分まで切り戻す。)。削り取り治療は形成層をなるべく傷つけないよう、病斑部を浅く広めに削り、塗布剤を塗っておく。
- 多発園では剪定した後は、必ず切り口に塗布剤を塗っておく。
- 心腐れ防止には、満開期から幼果期に10日間隔で登録のある農薬を散布する。
ナシ萎縮病
新梢の萎縮症状
- 病 原
- 糸状菌(担子菌類に属する多犯性の材質腐朽菌)。ただし、萎縮症状を起こす病原は本菌以外にもあると考えられる。
- 多発時期
- 春先
- 病 徴
- 春先の萌芽、展葉が遅れ、展葉初期の葉は波打ったり縮葉となり、葉先や葉の縁が黒変する。主幹や主枝、亜主枝の木質部に病原菌による腐朽が見られる。 最初から樹全体が発症することはなく、初め側枝から発症し、次いで主枝、さらに隣接する主枝へと広がる傾向がある。新梢や葉が著しく減少するため、樹勢が低下して、果実の生産性は甚だしく落ちる。
- 伝 染
- 子実体(キノコ)から飛散する担子胞子が伝染源であると考えられる。
- 防 除
-
- キノコ(黄褐色で樹皮にべったりと張り付いた形状)を見つけたら取り除く。
- 枯死枝や切り株を園内に放置しない。
- 刈り払い機等で幹を傷つけないように注意する。
- 高接ぎ更新時等の大きな傷口には癒合促進剤を塗布する。
モモせん孔細菌病
葉の病斑
果実の病斑
- 病 原
- 細菌(モモにほかにはスモモ、アンズを侵す)
- 多発時期
- 6〜9月(特に梅雨期)
- 病 徴
- 葉にははじめかすり状、水浸状から後に紫褐色の斑点病斑を形成、病斑部は境界がはっきりしてくると脱落し、穴が開く。ごく早い幼果期に感染すると黄色くなってミイラ化し、樹上に残る。果実がもう少し大きくなってから感染をうけると、はじめ針で突いたような褐色、小斑点の病斑を生じ、果実の生育につれて、大小さまざまの深い亀裂をもった黒褐色、不正形の病斑となる。結果枝には、開花期から落花期にかけ春型枝病斑が現れる。はじめは周辺より暗い色でやや盛り上がっているが、しだいに紫褐色〜紫黒色、楕円状〜不正形の病斑となり、やがて表面がやや陥没し、亀裂を生じたり、カサブタ状になったりする。当年伸長した新梢には、6〜8月に紫黒色縦長でややへこんだ夏型枝病斑を生じる。
- 伝 染
- 夏〜秋にできた落葉痕から侵入した病原細菌が新梢の皮部組織内で潜伏越冬し、開花期頃に春型枝病斑(スプリングキャンカー)を形成し、伝染源となる。雨滴により水媒伝染し、葉や果実の気孔や傷口から侵入する。夏型枝病斑(サマーキャンカー)は第二次伝染源にはなるが、越冬伝染源となることはない。
- 防 除
-
- 春型枝病斑を切除する(開花期前に発見することは困難。春型病斑の付近には集団的な初発生があるので、それを手掛かりに見つけるとよい。)。
- 防風対策を行う。
- 落花30日後までに袋かけをする。
- 開花直前に無機銅剤を散布する(休眠期では効果が期待できない)。
- 落花期以降は、本病と他病害(黒星病、灰星病等)の発生状況を考慮して、10〜14日間隔で薬剤散布を行う。
- 9月上旬〜下旬に無機銅剤を散布する(2回)。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
モモ縮葉病
縮葉症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、モモのほかにはネクタリン、アーモンドを侵す。)
- 多発時期
- 展葉初期
- 病 徴
- 展葉初期の葉が赤みを帯びた火ぶくれ状に膨らみ縮れる。のちに表面は白粉を噴いたようになり(子のう、子のう胞子の形成)、やがて黒く腐って落葉する。
- 伝 染
- 子のう胞子から形成された分生子が酵母様の菌塊をなして枝や芽の表面に付着して越冬し、翌春、降雨によって分生子が飛散、展開初期の新葉上で発芽して、葉の裏面の表皮細胞の縫合部を貫いて侵入する。
- 防 除
-
- 休眠期に登録のある農薬をかけむらのないように散布する。
- 生育期の散布は通常必要ないが、展葉後の発病がみられる場合、特に春先〜5月が低温、多雨の年には、登録のある農薬の中から開花後も使用できるものを用いて防除する。
モモ灰星病
成熟果の症状
花腐れ症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、モモのほかにはオウトウ、アンズ、スモモ、ウメ、ユスラウメ、サクラを侵す。)
- 多発時期
- 梅雨期
- 病 徴
- 花器、果実、枝梢、花梗に発生する。花器が侵されると花腐れとなり、花器全体が暗褐色、軟腐状になって、長期間枝梢に付着している。果実での症状は、はじめ小さな褐色斑点を生じ、やがて急速に拡大して軟腐症状を呈する。落花20日後くらいまでの幼果でも発病するが、その後は発病しにくくなり、収穫20日前頃から再び発病しやすくなる。収穫直前から収穫後の発病が多い。病斑の拡大は早く、果実の表面には灰褐色、粉状をおびた直径1mm程度の小さな半球状の分生子塊を密生する。発病果は落果しやすいが、ミイラ状になって樹上に残ることもある。
- 伝 染
- 被害残渣、果梗痕、被害枝梢、他の植物(オウトウ、アンズ、スモモなどの核果類)が伝染源となる。子のう胞子や分生子により風媒伝染する。
- 防 除
-
- ほ場の排水、風通し、日当たりをよくするような管理を行う。
- 開花期に1回、登録のある農薬の散布を行って花腐れの発生を防止するとともに、罹病花や罹病枝は摘除する。周辺の核果類の発病にも注意する(例年、花腐れの少ない園では、耕種的対策のみでよい)。
- 収穫20日前から収穫期にかけ、7〜10日間隔で3〜4回、登録のある農薬を散布する。
モモホモプシス腐敗病
発病果実
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびでモモのみを侵す)
- 多発時期
- 早生種;6〜7月、中生種;7〜8月、晩生;8〜9月。
- 病 徴
- 枝では、早春ころから健全部との境界が明瞭な褐色の病斑を形成し、先枯れ症状や芽枯れ症状を呈する。果実では、はじめ円形、淡褐色の病斑が小さなややくぼんだ状態で現われ、その後しだいに拡大して全面に及び軟腐する。やがて果実病斑の進展とともに、病斑部位は円形のシワを生じてへこみ、病斑上には灰白色〜黒色の小粒点(柄子殻)を形成する。
- 伝 染
- 罹病枝(枯枝)、罹病果梗が伝染源となり、柄子殻から溢出した柄胞子が雨滴とともに分散して伝染する。潜伏期間が長く、幼果期に感染しても発病するのは成熟期となる。
- 防 除
-
- 枯死枝、果梗、剪定痕の枯込み、芽枯れなどの罹病部位を剪定時にていねいに切り取って焼却する。
- 6月中旬〜収穫期まで予防的に登録のある農薬を散布する。
- 収穫後の保存や輸送はできるだけ15℃以下にする。
モモ黒星病
発病果実
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびで、モモのほかにはアンズ、ウメ、スモモ、オウトウを侵す。)
- 多発時期
- 6月下旬から7月(潜伏期間が長く、5月中に感染したものは、菌の侵入後30〜40日で発病し、6月中の感染では25〜35日、7月に入っての感染では20〜25日で発病する。)
- 病 徴
- 果実、枝、葉柄に発生し、ごくまれに葉にも発生する。実害の大きいのは果実の発病で、ついで枝の被害が大きい。果実には、5月下旬ころから6月にかけて、幼果の表面に、暗緑色の小さな斑点を生じる。果実が肥大するにつれて病斑も拡大し、径2〜3mmになる。病斑が多くつくられると、果実の肥大が不良となり、奇形や激しい裂果を生じる。枝の病斑は、はじめは赤紫色の、少しふくらんだ丸い形で、あまり大きくなく、径2〜3mmであるが、冬には灰褐色、春には白っぽくなる。
- 伝 染
- 主に2年生枝の病斑が伝染源となり、4月下旬ころ〜7月中旬ころに枝病斑上に分生子を形成(6月がピーク)、分生子が雨滴とともに飛散し、果実、新梢、葉柄に感染する。
- 防 除
-
- 5月上旬から6月下旬に10日間隔で、登録のある農薬を散布する(体系防除)。幼果期は毛じが多く薬液をはじきやすいので、展着剤を加える。果実に薬液が十分かかるように散布する。晩生種は散布終了時期を遅らせる。
- 剪定時に越冬病斑を見つけたら切除する。
モモ炭疽病
熟果の病斑
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびと不完全菌に属する2種のかび)
- 多発時期
- 落花後から6月いっぱいと収穫期。
- 病 徴
- 主に果実と枝に発生する。幼果では、大きさ1〜2cm程度のころからみられる。はじめ毛茸が指で押したあとのように倒れ、淡褐色の小斑点となり、すぐに丸くくぼんだ病斑になる。病斑は急速に拡大して大きくへこむ。病斑部には淡紅色の胞子が生じ、湿度が高いときには鮭肉色のベタベタした胞子塊となる。熟果では、淡褐色、円形のくぼんだ病斑ができ、速やかに腐敗し、病斑内に鮭肉色の胞子粘塊を作る。病果は落果する。
- 伝 染
- 不完全菌類のColletotrichum acutatumの場合は発病幼果の果梗に近い枝の組織内の潜伏越冬菌が伝染源となる。子のう菌類のGlomerella cingulataの病原菌の場合は、罹病したニセアカシアが伝染源となる。越冬病枝は春になると枯死するが、開花期ごろ表面には分生子が形成され、これが雨滴に混じって飛散、果実や葉に感染する。
- 防 除
-
- 剪定時、開花期に病枝を切除する。
- 幼果期の発病果は早期に発見し、土中深く埋める。
- 隣接地(40〜50m以内)にニセアカシアがある場合は、5月下旬頃から胞子が飛散するので、早めに袋かけをする。
- 開花期前後と梅雨期に登録のある農薬を散布する。
ブドウべと病
葉表の病斑
葉裏の標徴
幼果期の発病果穂
- 病 原
- 原生生物(卵菌類に属するかびで、ブドウのみを侵す。)
- 多発時期
- 梅雨期、秋雨期
- 病 徴
- 主に葉、花穂(果穂)が侵される。若葉の病斑部は、はじめ緑色が薄れ、葉裏には白色のかびを密生し、のちに黄変して落葉する。成葉になってからの発病では、葉脈に囲まれた黄色の角斑を生じ、葉裏の病斑部には白色のかびが密生する。花穂では白色の毛足の長いかびが生じるが、発生の多いときには、かびを生じる前に花穂全体が淡褐色に変色してしおれる。幼果が侵されると、表面が鉛色になって硬くなり、肥大は停止し、表面に白色のかびを生じる。未熟果では、果梗のつけ根から菌が侵入する場合と、すでに穂軸や支梗に侵入していた菌が体内感染する場合とがある。緑色系品種では緑色の果粒が次第に灰白色から淡黄褐色に変わり、一見日焼けに似た症状を示す。その後紫褐色にミイラ化、脱粒する。
- 伝 染
- 被害葉の組織内に作られる卵胞子が伝染源となる(土中で2年間は生存可能)。卵胞子は3ヶ月程度の休眠期を過ぎると、水分を得て発芽し、大型の分生子を形成(5月の展葉期から開花前ごろ)、風で飛散した分生子はブドウの葉上や地表面で発芽、60個程度の遊走子を放出、遊走子は雨水中を泳いで気孔付近で被のう胞子となり、発芽して気孔から侵入する。発病すると2〜3日後には葉裏に分生子を形成、二次伝染を繰り返す。
- 防 除
-
- 展葉5〜6葉期から定期的に保護効果の高い農薬を散布して予防する。特に、果穂の発病を防ぐために、初期の防除を徹底する。
- 開花期以降袋かけ前までは、治療効果も有し、果粉の溶脱や汚れの少ない農薬を散布する。
- 袋かけ後は、ボルドー液(3-2式〜6-4式)やICボルドー66Dまたは48Qを散布する。
- 軟弱徒長にならないような肥培管理や栽培管理を行う。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
ブドウ黒とう病
新梢の病斑
葉の病斑
果実の病斑
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、ブドウのみを侵す。)
- 多発時期
- ブドウの展葉初期〜梅雨期(気温20〜25℃で降雨の多いとき)
- 病 徴
- 枝(新梢)、葉柄、葉、果梗、果実、花穂が侵される。 葉では、最初、黒褐色の斑点が現われ、古くなると病斑部に孔があく。新梢では、ややへこんだ楕円形、中心部は灰白色、周辺部は紫色で鳥の目のような病斑を形成し、多発すると、枝全体が黒変して枯れる。大豆大期の幼果には、黒褐色の小斑点を散生する。果実の生育につれ病斑は大きくなり、中央部は灰白色、周辺部は紫色の鳥の目のようになる。ひどい場合は、果実は肥大せず奇形化し、成熟期にも軟らかくならない。
- 伝 染
- 結果母枝、巻きひげの病斑内の菌糸が伝染源となり、そこに形成された分生子が雨滴とともに飛び散り、新梢に感染する。新葉の病斑上には2〜3日後に分生子が形成され、二次伝染を繰り返す。
- 防 除
-
- 越冬伝染源の罹病枝や巻きひげを切除する。
- 休眠期防除を行う(発芽直前がよい) 。
- 雨よけ栽培をすれば薬剤防除の必要がない。
- 展葉2〜3葉期から小豆大または大豆大期までの間に4〜5回、登録のある農薬を散布する。
ブドウ晩腐病
熟果に形成された分生子塊
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびと子のう菌類に属する2種のかび。前者は多犯性、後者も多犯性であるがブドウを侵す菌はブドウのみに病原性を有するとされる。)
- 多発時期
- 着色期
- 病 徴
- 果実の発病が主体であり、時には花穂や葉にも発病することがある。花穂の発病は開花前に見られ、花蕾が褐変して鮭肉色の分生子粘塊を生ずる。硬核期以前の未熟果に発生すると、淡褐色から黒色の蝿糞様小点が現われ、多くはそのままコルク化する。硬核期以後の未熟果には、感染しても病斑は現われない。着色間際の果実は、はじめ淡褐色の小点を生じ、ここから次第に藻状に、ついで扇状に広がり、腐りはじめた果面には分生子堆の黒粒点が密生して、分生子粘塊が出てくる。小斑点を認めてから3〜5日後には全面が腐り、隣の果実にも移り始める。熟果の病斑は、最初から丸く、泥色で輪郭がはっきりせず、拡大するのも非常に速い。1〜2日後にはサメ肌状の小粒点が現われて、この上は鮭肉色の分生子粘塊と果汁でベトベトになり、果皮には小じわが見られるようになる。
- 伝 染
- 第一次伝染源は結果母枝、巻ひげ、果梗残存部に潜伏した菌糸で、越冬菌糸から分生子が形成され、雨滴とともに飛び散り、果実に感染する。新梢や巻きひげには無病徴で感染する。発病果からは分生子が飛散して二次伝染するが、発病花穂、感染未熟果も第二次伝染源になる。
- 防 除
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- 休眠期に巻きひげや穂梗基部(前年の成り跡部)を切り取る。
- 密植を避け、樹間を広げて棚を明るく保つ。窒素肥料もひかえる。
- 棚上に雨よけトンネルを設置するか、ハウス栽培とする。
- 袋かけや笠かけは早めに行う。
- 発病花穂や果実は見つけ次第除去する。
- 休眠期防除を行う(発芽直前が効果的)。
- 発芽後袋かけ期までは、黒とう病などの他病害との防除を兼ねて予防中心の薬剤散布を行う。
ブドウ褐斑病
葉の病斑
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属するかびで、ブドウのみを侵す。)
- 多発時期
- 8〜9月(露地栽培)。施設栽培では初発、落葉とも早くなる。
- 病 徴
- 葉に発生する。通常、7月上旬ころから新梢基部葉や枝付近の葉から局所的に被害が現われ、次第に先端葉に広がる。病斑は品種によってかなり異なり、甲州やネオマスカットでは大きさ4〜5mmの黒褐色の円となるが、米国系品種では7〜8mmの不正形、あるいは丸い病斑となり、その周りが赤褐色で輪郭がはっきりせず、輪紋を示すこともある。発病葉は早期落葉するため、着色不良、糖度不足、結果母枝の充実不良を引き起こす。
- 伝 染
- 被害残渣、枝に付着した分生子、落葉上の分生子と菌糸が伝染源となり、5月中下旬から6月の降雨時に風雨とともに分生子が飛散し、葉裏の気孔から侵入する。新しい病斑にも分生子が形成され、二次伝染する。
- 防 除
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- 落葉を処分する。
- 休眠期(発芽前)防除を行う。
- 生育期は、黒とう病、灰色かび病、べと病との防除にあわせ、褐斑病に有効な薬剤を選択して防除する。
ブドウうどんこ病
未熟果の症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、ブドウのみを侵す。)
- 多発時期
- 開花期〜幼果期(6月中旬〜7月上旬)。芽基部の分生子形成は4月下旬から始まり、新梢や花穂に発病、開花期前後から二次伝染を繰り返し、盛夏を除いて秋まで続く。
- 病 徴
- 若葉、新梢、果実に発病が見られる。葉では、表面にクモの巣状の白色のかびが生え、のちに黄白色の病斑ができる。多発すると、葉の裏側まで広がり、葉全体が白色の粉で覆われたように真っ白となる。幼果が感染すると、うどん粉をまぶしたように白くなり、発育が止まって肥大は不揃いとなり成熟しない(石ブドウ)。着色期近くになって発病した果粒は、病斑部がさび状となって硬化し、着色期を迎えても青みが残る。また果形もゆがみ、のちに裂果する。病斑部に放射状の点線が走っていることも多い。穂軸や果梗にも感染する。開花前の花穂にも発生する。
- 伝 染
- 第一次伝染源は芽鱗片で越冬した菌糸。周辺に自生しているエビヅルも伝染源となりうる。子のう殻で越冬している可能性もある。越冬菌糸から分生子を形成し、風媒伝染する。新たな病斑上には分生子が形成され二次伝染する。
- 防 除
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- 発病しやすいガラス室栽培では、発芽前に石灰硫黄合剤を散布し、開花前から幼果期(小豆大期)までに2〜4回、登録のある農薬を散布する。
- ハウスや露地栽培では、落弁期から幼果期に登録のある農薬を1〜2回散布する。多発条件下ではDMI剤やストロビルリン系剤などを用いる。
カキ角斑落葉病
葉表の病斑
葉裏の病斑
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属する糸状菌で、カキのみを侵す。)
- 多発時期
- 8月〜9月
- 病 徴
- 葉だけに発病する。はじめは淡褐色で、不正形の斑点ができ、のちに葉脈に囲まれて多角形となり灰褐色に変わる。病斑の周縁は、黒色となり、病斑の表面に黒い小粒点(分生子層)が散生し、病斑の大きさは3〜7mmくらいとなる。病斑の裏面は、灰褐色から暗灰色で黒い小粒点はごくまれにみられることもある。激しく発病して、果実が着色する前に落葉すると、落果、生育不良、早期着色、糖度不足、軟化などを起こす。
- 伝 染
- 落葉中の菌糸や、秋季に飛散して枝幹、へた、付近の雑草などに付着した分生子が第一次伝染源。5月下旬〜6月上旬ころから、風雨とともに分生子が飛散して葉に達し、気孔から侵入する。二次伝染もする。潜伏期間は約30日。
- 防 除
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- 葉体内窒素が不足しないような肥培管理を行う。
- 落葉をかき集め、埋没するか、焼却処分する。
- 主要感染期の6月中旬〜7月中旬を中心に登録のある農薬を散布する。
カキ円星落葉病
葉表の病斑
葉裏の病斑
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、カキのみを侵す。)
- 多発時期
- 9月
- 病 徴
- はじめ葉に針の頭大の小さい円形の黒い斑点ができ、次第に広がって、大きさは3〜5mmくらい、ときには7mmくらいとなる。病斑の周縁には黒い輪ができる。その中央部は、赤褐色をした丸い病斑となる。病斑の裏側は黒褐色で、10月以降になると、その上に小さい黒粒点(未熟子のう殻)ができる。この黒粒点は、病斑の表側にもまれにできることがある。激しく発病して、果実が着色する前に落葉すると、落果、生育不良、早期着色、糖度不足、軟化などを起こす。
- 伝 染
- 罹病落葉上の子のう殻が伝染源となり、4月下旬〜5月上旬ころから子のう胞子が飛散し始め、主として5月上旬から7月上旬にかけて感染する。潜伏期間は60〜120日。
- 防 除
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- 葉体内窒素が不足しないような肥培管理を行う。
- 落葉をかき集め、埋没するか、焼却処分する。
- 薬剤防除は角斑落葉病と同様。
カキ炭疽病
熟果の病斑
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属する糸状菌で、カキのみを侵す。)
- 多発時期
- 6〜9月
- 病 徴
- 主として枝や果実に病斑が現われるが、若い葉の葉柄や葉身に発病することもある。早いときには4月中下旬ころに、発芽して間もない新梢に発病、芽が枯れることもある。枝には、普通5月ころから発病しはじめる。緑枝に暗褐色で楕円形の斑点が現われてくる。やがて、この斑点が拡大し、枝の周囲を取り巻くようになると、病斑から先の葉は萎凋し、枝は枯れてくる。果実では6月下旬〜7月の幼果の時期に発病し、 盛夏期は発病しないが、9〜10月にかけて降雨があると再び発病が激しくなる。果実の病徴は、はじめ黒い小斑点として現われ、次第に病斑は拡大して指で押したように少しくぼみ。直径1cmくらいの大きさになる。病斑の中央部は濃黒色で、周縁部は色が薄くなり、健全部との境は入れ墨状に青緑色となる。発病した果実は落下しやすく、成熟間際の果実では早く着色する。
- 伝 染
- 前年枝の病斑内の菌糸が第一次伝染源となり、3月下旬ころから分生子を生じ、雨滴とともに分生子を飛散させ新梢に感染する。落葉痕、芽の鱗片などに感染して越冬したり、落下した罹病果または分生子の形で土壌中で越冬することもある。新梢や果実の病斑上に形成される分生子は第二次伝染源となる。
- 防 除
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- 苗木などで病原菌を園内に持ち込まない。
- 病枝の剪除。
- 発芽前に休眠期防除剤を散布する。
- 徒長枝の発生を少なくする肥培管理と夏季剪定。
- 通常なら梅雨期に2回、初秋期に1回、登録のある農薬を散布する。
カキうどんこ病
葉裏の病斑
子のう殻
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、カキのみを侵す。)
- 多発時期
- 5月下旬〜10月下旬
- 病 徴
- 若葉では5月から6月に発病しはじめ、新梢基部の小葉の表側に直径1mmくらいの薄墨色の斑点が現われる。この斑点は単独で出たり、集まって直径1〜2cmくらいの病斑を作ったりする。 病斑の裏側には、かすかに白いかびが見られる。8月の終わりころから、うどんこ病特有の白粉症状が現われ、病斑の裏側はかなり厚い白色粉状の菌糸でおおわれる。10月になると、葉裏の厚い白色の菌糸の間に、はじめ黄色、のちに黒くなる小さい粒点(子のう殻)ができる。
- 伝 染
- 枝に付着した子のう殻、落葉上の子のう殻が第一次伝染源。子のう胞子は4月下旬〜5月上旬にかけて飛散し始め、風媒により新葉に伝染する。新葉の病斑からは分生子による二次伝染も盛んに行われる。
- 防 除
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- 剪定時に子のう殻の付着した枝を剪除、園外に持ち出し焼却する。
- 発芽前に休眠期防除剤を散布する。
- 生育期の防除は5月中下旬、6月上中旬、8月下旬〜9月上旬が適期(落葉病、炭疽病との同時防除で薬剤を選定)。
カキ灰色かび病
花弁の症状
葉の病斑
- 病 原
- 糸状菌(不完全菌類に属する多犯性のかび)
- 多発時期
- 5〜6月
- 病 徴
- 若い葉の葉先や葉のへりのほうが水気を失って淡緑色に変わり、やがて褐色となる。病斑の周縁は波状を呈し、病斑の大きさは2〜3cmくらいになる。湿潤な天候のときには、病斑の上に灰色のかびが出てくる。幼果のガク片や、花弁にも同様のかびが生え、落花後、果実の表面に小黒点を生じることがある。
- 伝 染
- 落葉上の菌糸(菌核)と分生子、他の作物や有機物上に形成された分生子が伝染源となり、これが風により飛散して伝染する。
- 防 除
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- 窒素過多による枝の過繁茂を防ぐ。
- 落花後、果実に付着した花弁を取り除く。
- 5月中下旬、6月上中旬にうどんこ病などの同時防除を考慮して登録のある農薬を散布する。
イチジク疫病
発病果実
- 病 原
- 原生生物(卵菌類に属するかびで、イチジクのほかにはコショウ類、フェニックス、トウガラシ、カンキツ、リンゴを侵す。)
- 多発時期
- 7月上中旬、9月ごろの多雨の時期
- 病 徴
- 葉、果実、新梢に発生する。5〜6月ごろの多湿で温暖な条件下で下葉、下枝から発病し始め、はじめ褐色の小病斑、のちに暗緑色ないし暗褐色のほぼ円形の病斑となる。夏果は7月ごろから、秋果は9月ごろから発病する。成熟期に近いものに発生が多い。はじめは果面に暗緑色または暗紫色の水浸状の斑点もしくはやや円形でくぼんだ部分ができ、のちに白色粉状のかびで覆われ、軟化して落果する。
- 伝 染
- 病果、病葉が土中に混ざり、そこで形成された厚膜胞子が第一次伝染源となる。5月ごろから厚膜胞子が発芽し、遊走子のうを形成、遊走子のうから放出された遊走子が降雨によりはね上げられ侵入する。被害部に形成された遊走子のうにより二次伝染が起こる。
- 防 除
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- 排水不良園では排水溝を設けて排水をよくする。
- 発病した果実、葉は随時集めて園外に搬出し、土中深く埋めるなどほ場衛生に努める。
- 遊走子のはね上がりを防ぐため、稲わら、麦わら、草類などを樹冠の下に敷く。
- 6月中旬〜7月上旬、8月下旬〜9月上旬ころに、登録のある農薬を予防中心に散布する。特に、降雨後の散布が重要である。
イチジク株枯病
発病樹
木質部の褐変症状
- 病 原
- 糸状菌(子のう菌類に属するかびで、イチジクのみを侵す。)
- 多発時期
- 露地栽培6〜10月(ピークは6月中旬〜7月中旬と9月下旬〜10月下旬)。施設栽培3〜11月。
- 病 徴
- 6月ころから葉が黄化萎ちょうし、急激に落葉して枯死する。成木の地上部では、地際部の主幹や主枝に不規則な大型円形の茶褐色〜黒褐色病斑を生じて幹が腐敗する。病斑部は濃褐色のあざ状となったり、ひび割れがが生じ、この部分は上方に拡大する。地下部の主幹や根は黒褐色に腐敗しており、木質部も茶褐色に変色している。春〜秋では病徴が現れてから約2〜3か月で枯死する。
- 伝 染
- 被害残根などとともに土壌中の比較的浅い部分に生息している菌(土壌中での形態は不明)が伝染源となり、地際部から土壌伝染していると考えられる。周辺ほ場への伝染は、地際部に形成された病斑上の子のう胞子や土壌中の病原菌が風雨によって運ばれて起こる。罹病樹から採穂することにより苗伝染する。
- 防 除
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- 健全な苗木を植える(発病ほ場からは穂木を採取しない)。
- 無病地で栽培する。
- 抵抗性台木に接ぐ(完全な抵抗性ではないので、菌密度が高い場合には、発病することがある。)。
- 発病をみたら発病株は抜き取り、周辺株には5〜10月の間は月1回薬剤をかん注する。
- 発病初期の病患部を削り取り登録のある塗布剤を塗布する(収穫後〜休眠期)。
※農薬の登録は不変ではなく、変更・失効する場合があります。
農薬の使用前には必ずラベル等で登録内容を確認してから使用してください。
イチジクさび病
葉裏の標徴
- 病 原
- 糸状菌(担子菌類に属するかびで、イチジクの葉を侵す。)
- 多発時期
- 8月下旬〜10月
- 病 徴
- 葉に褐色の小斑点を形成、次第に大型の不整形斑となり早期落葉する。葉裏には淡黄色の細粒点(夏胞子層)を形成する。また、のちにこれとは別に、0.2〜0.8 mmの黒色斑点(冬胞子層)を伴う赤褐色斑点を生じる。多発葉は早期に落葉する。
- 伝 染
- 生活環は解明されていないが、病葉に生じた冬胞子が第一次伝染源と考えられる。冬胞子が発芽し担子胞子を飛散させ、感染、発病が始まるものと考えられる。病斑上には夏胞子が形成され、二次伝染する。
- 防 除
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- 罹病落葉は集めて処分する。
- 7〜8月に15日間隔で4回薬剤散布する(8月が最も重要な防除時期と考えられる)。