ダイズ |
葉黄化 |
マンガン含有量の少ない水田転換畑(扇状地)で発症したマンガン欠乏症。 発症は上部葉から始まり、初期は葉脈間が黄化しその後葉全体が黄化した。 画像は対策試験のものであるが、左側はマンガン肥料を基肥で施用したため欠乏症の発症は無かった。 |
再現試験画像
サツマイモ |
先端部の枯れ |
サツマイモは低栄養土壌で栽培される事が多い作物だが殆ど欠乏症の発症は無い。 まれに砂質土壌で栽培するとホウ素が欠乏し、先端部の枯れ症状や茎の縦割れ症状を発症する。 |
エダマメ |
下葉の葉脈が赤紫色に変化した |
排水不良の酸性土壌(pH5.6)でエダマメを栽培したため、マンガンを過剰に吸収し葉脈が赤紫色となるマンガン過剰症を発症した。 |
トマト |
葉先端部が黄化した |
水耕栽培で養液の成分バランスが悪く、カリが欠乏したため発症した。作物に関係なくカリ、カルシウム、マグネシウムなどの成分が欠乏すると、葉の縁や先端部、葉脈間によく似た黄化症状が発症する。 |
トマト | |
尻腐れ症 | |
トマトはカルシウム吸収量が比較的少ない作物だが、カルシウムが少し不足すると尻腐れ症を発症する。土壌の乾燥等で吸収できるカルシウム(水溶性他)が減少すると、酸性成分過多状態となり尻腐れ症が発症する。窒素過剰と、ホウ素欠乏でカルシウムが移動できなくなるのも発症要因である。 |
トマト |
葉脈間が淡色化 |
トマトは栽培期間が長く収穫量も多い作物なのでマグネシウム持ち出し量が多く、欠乏症が発症しやすい。 マグネシウムの欠乏により葉緑素が作れないため葉が淡色化し、光合成が低下し収量が低下する。 |
トマト |
葉脈や葉先端部が黒紫色に変化した |
ヨーロッパで栽培されているトマトをpH6以下の酸性・過湿土壌で栽培したため、マンガンを過剰に吸収し発症した。日本で品種改良されたものは比較的低pHに耐えるが、アルカリ土壌で栽培されているヨーロッパのトマトはマンガン過剰症を発症しやすい。 |
ナス |
黄化葉 |
ナスのマグネシウム含有量は高くはないが、収穫量が多いため土壌からのマグネシウムの持ち出し量が多く、栽培途中にマグネシウムを補給しないと欠乏し葉が黄化する。 マグネシウム欠乏症は下葉の葉脈間が黄化し症状が中部葉に広がる。黄化した葉は光合成が低下し早期に落葉する。 |
キュウリ |
葉が湾曲(落下傘葉) |
カルシウム欠乏で発症した落下傘葉。葉の酸性成分をカルシウムで中和できないため葉縁が焼けて萎縮し、萎縮した部分に引っ張られ落下傘葉となった。ホウ素の過剰でも類似症状が発生する事もある。 |
キュウリ |
葉縁が枯れ、落下傘葉が発生した |
ホウ素肥料を標準施肥量の約5倍施用したために発症したホウ素過剰症状。 下葉の葉縁が枯れ落下傘葉となり、中〜上部葉に症状が拡大した。 |
ハクサイ |
内部で葉先が褐色に変化した (軽度なアンコ症) |
ハクサイは生育後期に十分なカルシウムが供給されないと、葉先端部に焼け症状が発症する。土壌に十分なカルシウムがあっても、乾燥や吸収できる形態のカルシウムが不足すると発症する。窒素過剰、ホウ素不足も要因である。 |
画像提供:
長野県中信試験場
吉田主任研究員
ハクサイ | |
内部で葉先が褐色に変化した(アンコ症) | |
ハクサイは生育後期に十分なカルシウムが供給されないと、内部で葉先端部が褐色になる焼け症状が発症する。土壌に十分なカルシウムがあっても、乾燥や吸収できる形態のカルシウムが不足すると発症する。窒素過剰、ホウ素不足も要因である。 |
ブロッコリー |
内部空洞症状 |
生育初期〜中期に土壌乾燥や植物体が高温になると発症し窒素過剰も発生要因となる。ホウ素欠乏症と言われることもあるが、ブロッコリーのホウ素欠乏症は主に茎の褐色斑点として発症する。 |
ブロッコリー | |
茎表面の褐変 | |
ブロッコリーの茎がかさぶた状に木化するのはホウ素欠乏による症例で近年発症が多い。同じホウ素欠乏症でも茎内部から花蔀部に達する空洞が発生する事もある。一般的に土壌のホウ素欠乏で発症するが、ホウ素が十分あっても土壌pHが高い場合や、乾燥でホウ素が吸収できないために発症することもある。 |
ホウレンソウ |
葉脈間が黄色く斑入りとなる |
ハウスのホウレンソウで葉脈間が黄色く斑入りになる症状が部分的に発症した。 マンガン含有量が少ない土壌であり、その上毎作施用していた苦土石灰の量が多すぎたため土壌pHが7以上に上昇し、マンガンの吸収量が低下し欠乏症が発症した。 対策として黄化直後に硫酸マンガン肥料の葉面散布を実施したところ非常に有効であった。 |
ホウレンソウ (水耕) |
葉脈間の黄色い斑点 |
水耕養液の成分に問題があり亜鉛含有量が不足していた。生育の盛んなときに亜鉛不足が表面化し、初期症状は葉脈間の小さな黄色い斑点であったが生育に伴い6〜8mmに拡大した。 同じ養液を使用する他の野菜にも同症状が発症していたが比較的軽微であった。 |
セロリー |
葉柄にささくれ状の亀裂が入り、芽の伸長が停止した |
セロリーは比較的ホウ素要求量の多い作物であるが、多肥・多灌水のホウ素が欠乏しやすい環境で栽培され欠乏症を発症した。ホウ素欠乏の代表的症状である。 |
アオジソ |
上部葉が湾曲した |
アオジソ上部葉の湾曲はマンガン過剰吸収や吸収成分の偏りで発生するが、このアオジソは三要素・中量要素・微量要素の全成分を過剰吸収していた。追肥の液肥灌注量を大幅に減らすと発生皆無となった。 |
ダイコン |
空洞症 |
栽培中期に低温により生育が停滞し、その後の高温によって急激に生育した場合に発症することが多い。バランスの悪い施肥も発症要因となる。 |
画像提供:
愛知県農業総合試験場
ハウスミカン |
葉先端部が黄化した |
ハウスミカンのホウ素欠乏症対策としてホウ素肥料を多めに施肥し発症したホウ素過剰症。ハウスミカンは糖度向上のため樹を過乾燥状態とするため、より強くホウ素過剰症状が発現している。ホウ素は微量要素の中でも適量範囲が狭い成分で特に注意が必要。 |
ナシ |
葉が縁から黒化した |
カルシウム資材を4〜5年間施用しなかったナシ園で発症したカルシウム欠乏症。 樹体内では各種無機・有機酸が存在しカルシウムで中和しているが、カルシウムが不足すると酸過多状態となり葉が障害を受け、葉縁が黒化する症状(葉焼け)が発症する。 |
ナシ |
ナシ新梢葉の黄白化症状 |
ナシ新梢葉の葉色が5〜6月に黄白色〜クリーム色になり、8月頃に葉色が回復する症状が発症した。 夏には葉色が回復するが春〜夏の間は光合成が大幅に低下しており、果実の小型化、糖度低下の原因となっている。原因は黄白色の葉色から鉄欠乏とも言われていたが、分析の結果マンガン欠乏症であった。この症例は堆肥中に過剰な石灰が含まれており、それを多量に施用したため拮抗作用でマンガンの吸収が阻害され発症した。 |
モモ |
トラ葉が発生 |
5月頃にモモの新葉に葉脈間が黄色くなる症状(トラ葉)が発生したが、7月には回復し健全な葉と同色となった。原因は苦土石灰等アルカリ資材の過剰施用で、土壌pHが中性に近づきマンガンが吸収できない状態であった。 対策としてアルカリ資材の施用を中止し、基肥を生理的酸性肥料が主成分の物に変更した。 |
カキ |
先端から4〜5枚の葉が黄化した |
5〜6月に枝の先端から4〜5枚の葉が黄化する症状が発症した。鉄欠乏との意見もあったが土壌含有量の多い鉄が欠乏することは殆ど無くマンガンの欠乏であった。 原因は石灰含有量が多い堆肥を多量に施用し、その上アルカリ資材を施用したため土壌pHが上がりすぎ、マンガンが吸収できなくなり欠乏症が発症したと考えられる。 |
画像提供:
山梨県果樹試験場
ブドウ |
葉縁の枯れ |
カリウムは土壌に固定されない成分で、施用量が少ないと降雨や灌水により流亡し欠乏する。症状は葉縁の枯れ症状が主であるが、葉脈間が黄化し苦土欠乏に似る場合もある。 |
ブドウ |
葉脈間が黄化 |
ブドウの下葉や果実付近の葉に葉脈間が薄緑色や黄色くなる症状が6〜8月に良く見られる。 原因はマグネシウムの欠乏で、上部葉や果実にマグネシウムが移動し下葉等に欠乏症が発症した。マグネシウム欠乏による黄化葉は光合成が低下しており早期に落葉する。 |
画像提供:
山梨県果樹試験場
ブドウ |
下葉や果実付近の葉がモザイク状に葉脈間が黄化し早期に落葉する (軽度な症状と重度の症状) |
カリやカルシウムの過剰による拮抗作用でマグネシウム欠乏症が発症する事もあるが、殆どが流亡しやすいマグネシウムを十分施用していないため発症している。苦土は葉緑素の必須成分で、欠乏すると葉緑素が作れなくなり葉脈間が黄化する。 |
画像提供:
愛知県農業総合試験場
ブドウ |
収穫期に未着色粒が残る(ゴマシオ症状) |
ブドウは日照不足や着果過多、着色期の高温等で着色不良になることが多いが、土壌のマンガンが不足していたり、pHが高すぎるとマンガンが十分に吸収できないので、未着色粒が残るマンガン欠乏症(ゴマシオ症)を発症する。 |
画像提供:
山梨県果樹試験場
ブドウ |
葉脈間に淡黄緑色の斑点が発生し、その後葉脈のみ緑色が残る |
土壌の過乾燥やアルカリ化によりマンガン吸収が不足すると発症する。マンガン欠乏症は果実の着色不良や、未着色粒が残るゴマシオ症として現れる事が多いが、極端にマンガンが欠乏すると葉にも発症する。 |
ブドウ |
葉に黄色斑点が発生しその後虫食い状態となる |
ホウ素が欠乏すると新梢先端から3〜4枚目の葉に、油侵状の黄色い斑点が多数発生しその後褐色斑点となる。葉の展開により脆い斑点部分が落下し虫食い状態となる。 先端から3〜4枚目の葉のみに症状が出ることが多く、虫に食われた葉とは区別が出来る。このような状態のブドウは、ホウ素欠乏により果実が「アン入り果」となり品質が低下する。 |
画像提供:
山梨県果樹試験場
ブドウ |
葉萎縮・葉脈間淡色化 |
一般的にブドウのホウ素欠乏症は果実に「アン入り果」として発症することが多いが、ホウ素が極端に欠乏すると萎縮や葉脈間淡色、油浸状の斑点症状が葉に現れる。ホウ素は流亡しやすく、カルシウムによる拮抗作用(吸収阻害)を受けやすい成分なので予防的な施肥が必要である。 |
画像提供:
山梨県果樹試験場
ブドウ |
アン入り果 |
ブドウのホウ素欠乏症は他作物のように先端部の枯れという症状が現れる事はあまり無く、果実にアン入り果として発症する事が多い。ホウ素は流亡しやすく、カルシウムによる拮抗作用(吸収阻害)を受けやすい成分なので予防的な施肥が必要。 |
茶 |
摘採面の茶葉が黄化 |
6〜7月に茶樹上部の葉全体が薄く黄色くなる症状が発症する。 鉄やマンガンの欠乏と言われているが鉄欠乏症の特徴である網目症状は無く、全体が薄く黄色くなるのでマグネシウムの欠乏症である。 茶園土壌は強酸性のためマグネシウムが流亡しやすく欠乏症が発症しやすい。 |
茶 |
茶葉が網目状に黄化した |
古い茶園の2〜3番茶で、摘採面や下葉に葉脈間が黄化する鉄欠乏症状が発症する。 砂質土壌の茶園で鉄が流亡した場合や、土壌にマンガンが多いと鉄が拮抗作用(吸収阻害)により鉄の欠乏症が発症する。 同時に亜鉛が欠乏した場合、症状が悪化する。 |
茶 |
葉脈間の斑点 |
栽培20〜30年以上の茶園では土壌から亜鉛などの金属元素が下層に流亡しており欠乏症が発症する。同症状は主にせん茶の2番茶に発症することが多いが、極端に亜鉛が欠乏していると一番茶にも発症する。 リン酸の過剰も亜鉛吸収を阻害し発症の要因である。 亜鉛欠乏の症状として画像の斑点症状と、葉の「よじれ症状」が発症するが、両症状が同時に発症する場合もある。 |
茶 |
葉のよじれ |
栽培20〜30年以上の茶園で二番茶に発症する亜鉛欠乏の特異的な症状である。 茶園土壌では、亜鉛などの金属元素が土壌の酸成分に溶かされ下層に流亡し減少する。そのような土壌はリン酸含量も多いので、拮抗作用(吸収阻害)により亜鉛欠乏症が悪化する。 同じ亜鉛欠乏でも葉脈間に黄色斑点が現れる場合もあり同時に発症する場合もある。 茶品質と亜鉛含有量とは相関があると言われており、このような茶は低品質の事が多い。 |
キク |
芽焼け症 |
梅雨が明け晴天が2〜3日続くとキク先端部の芽や葉縁が焼けたように褐色となり生育が停止する。その後脇芽が発生し、発症葉は褐色部分が剥がれ落ち異形となる。梅雨明け後の急激な伸長に対し、一時的にカルシウム供給が不足するのが原因と考えられる。梅雨明けの強い日射も発症の引き金となる。 |
キク |
葉の縁枯れ |
砂丘地のキク栽培でホウ素欠乏症状がありホウ素肥料を施用したが、全層施用量をすじ播きで同量を施用し高濃度となった部位に苗を定植した。 そのため根域のホウ素濃度が標準施肥量の5〜10倍となり、過剰に吸収したホウ素が葉縁に集積し葉縁枯れ症状が発症した。 |
バラ |
着花が皆無で、葉脈間が淡色化 |
バラで花芽が全く付かない症状があり、葉脈間が淡色で微量要素欠乏が疑われた。葉面散布による欠乏元素の確認テストで亜鉛散布株のみが花芽を付け、原因は亜鉛欠乏であることが判明した。発症は土壌亜鉛の不足が原因であった。 |
ストック |
茎に縦割れ |
砂質土壌で栽培したストックの茎にホウ素欠乏による縦割れ症状が発症した。 ホウ素を殆ど含まない培土での育苗と、ホウ素が欠乏した畑で栽培したためであった。症状は茎だけでなく花にも奇形として現れた。 |
スイートピー |
茎葉に鉄錆色の斑点が発生 |
スイートピー収穫期中〜後期に下葉に鉄錆色の斑点が現れ上部に広がり、茎にも同じ症状が現れた。ほぼ同じ頃に葉が凸凹になる症状も発症し下葉は落葉した。 当初病気か欠乏症と言われていたが分析の結果、鉄・マンガンを過剰に吸収していることが判明した。 過剰吸収の原因は、スイートピー原産地(イタリア地中海地域)は風化した石灰岩土壌(アルカリ性)で非常に乾燥しており、微量要素の鉄・マンガンを吸収しにくい環境にある。そのためスイートピーは強力な鉄・マンガン吸収能力を持っており、湿潤で鉄・マンガンを多く含む日本の土壌で栽培すると、それらを過剰に吸収し斑点症状を発症する。 |
チューリップ |
葉・花弁の先端部が枯れた |
チューリップは比較的ホウ素要求量の多い花なのでホウ素肥料を施用したが、間違えて標準施用量の約10倍量を施用した。そのため葉と花弁の先端部が枯れるホウ素過剰症状が発症した。 |
ユリ |
上位葉がまだらに黄白化した(まだら症) |
オリエンタル系ユリを中性土壌で栽培したため、微量要素の吸収が悪化し、上位葉がまだらに黄白化する鉄欠乏症が発症した。 |
写真提供:
岐阜県農業技術
センター
フランネルフラワー |
葉脈間が黄化した |
酸性土壌を好み鉄欠乏症を発症しやすいオーストラリア原産「フランネルフラワー」を、微量要素が吸収しにくい中性に近い土壌で栽培したため発症した鉄欠乏症。 |